イナゴの大群(大量発生))の発生の理由や被害はどのくらい甚大になる?

大空を覆い尽くすバッタ(イナゴを含む)の大群!

 

西も東も見渡す限りバッタ又バッタ・・・

 

晴天なのにあたりが薄暗くなり、
目に入るものはただバッタのみです。

 

これは十分ホラーの対象になりますね。

 

このようなバッタ類の大量発生と
とその被害を

蝗害(こうがい)

と呼びます。

 

蝗は、漢語のイナゴやバッタ類のことで、
これらの昆虫による被害のことを指すのです。

 

今回はその蝗害の大量発生の原因や、
その被害はどんなものなのか、
日本で大量発生が起こる可能性などを
見ていきましょう。

イナゴが大量発生する原因は?

 

まず最初に、
この記事で単に『イナゴ』と書いた場合は
トノサマバッタやサバクトビバッタなど
相変異を起こす

バッタ類全般を指します。
バッタ(飛蝗)は、
バッタ目(直翅目)・バッタ亜目 (Caelifera)
に分類される昆虫の総称で
イナゴ(蝗)も含まれます。

 

しかし狭義のイナゴ、
つまり日本などの水田にいるイナゴは、
蝗害を起こすことはほとんどありません。

 

日本での発生は稀なため、
漢語の『蝗』に誤って
『イナゴ』の訓があてられたため、
イナゴとバッタが混同されるようになりました。

 

インターネット上で『イナゴの大群』
などと書かれている場合、
その大半は狭義のイナゴではなく、
トノサマバッタなどのバッタ類のようですね。

 

この記事では日本の水田にいるイナゴは
『狭義のイナゴ』などと書き、区別しています。

イナゴ(バッタ)が大量発生する原因は?

イナゴ(バッタ)が
大量発生する原因としては、

『相変異』

という現象によるものとされています。

 

バッタの幼虫は、
他の個体と接する機会が少ない状態
では、単独の生活を送る、
『孤独相』という通常の成虫になります。

 

しかし、他の個体と接する機会が多いと

群生相

と言われる、飛翔能力と集団性が高い成虫に変化します。

 

群生相の孤独相との違いは、

    • 孤独相に比べて黒い色になる。

 

    • 翅が長くなる。

 

    • 足が短くなる。

 

    • 頭幅が大きくなる。

 

    • 飛翔能力が高くなる。

 

    • 集団性が強くなる。

 

などです。

 

孤独相の個体は
お互いに離れようとしますが、
群生相の個体は互いに近づこうとするのです。

 

又、孤独相の時には食べなかった植物まで
食べるようになります。

 

この群生相と孤独相は
生まれつきのものですが、
遺伝子の作用によるものではなく、
親が暮らした集団の密度によるものです。

 

しかも、親による相違も
ホルモンなどによるものではなく、
単に他の個体との接触の多寡に
よるという、非常に不思議な現象です。

 

集団生活をしている親からは、
集団の密度が高いほど、
より群生相が強い子が産まれます。

 

そして、集団密度が低い程孤独相に近い子が生まれ、この特徴は世代を超えて累積的に遺伝していきます。

 

こうして、
群生相がどんどんと強くなっていき、
その結果バッタの大量発生となります。

 

これがバッタの大量発生の原因です。

 

体色の黒化や羽や足の長さなどの
外見上の変化があることは、
実験によって確認されています。

 

なのに、行動上の変化については、
むしろ否定的な研究結果が多いという
非常に不思議な状態にあります。

 

或いは、[His7]コラゾニン以外に
行動上の変化をもたらす物質が
存在しているのかも知れませんが、
現在の所はその物質は確認されていません。

 

イナゴの大量発生が起きると被害はどうなる?

もし、バッタ(イナゴ)の大量発生が起きたら
その被害はどうなるのでしょうか。

 

こちらはロシアでの動画です。

 

20秒過ぎあたりから、
バッタの襲来が始まり、
次第に密度が高まって
視界も殆どなくなってしまいます。

 

こちらはアフリカのモーリタニアでの
サバクトビバッタ襲来の動画です。

 

25秒あたりのバッタの山は
ゾッとしますね。

 

この蝗害の恐ろしさは、
古くから知られていて、
『神の罰』として
聖書やコーランにまで書かれています。

 

2003年に西アフリカで大発生した蝗害は
モーリタニア、マリ、ニジェール、
スーダンなどに広がりました。

 

その被害の総額は、
国連食糧農業機関(FAO)の試算では

25億ドル(約2,751億4,858万円)!

に上りました。

 

「なんだ、東京都の年間予算の1/50じゃないか」

なんて言わないで下さいね。

 

これらの国々は人口はともかく
所得は日本の1/50位なのです。

 

つまり、日本の状況に換算すれば
13兆円の損害ということになります。

 

東日本大震災の被害額は、

およそ17兆円

とされています。

 

それに近い位の被害額なのです。

 

しかもこれらの国は所得が少ないので
ダメージはさらに大きいのです。

 

日本の場合、年間400万円の所得が
300万円に減ると、かなり苦しいですよね。

 

しかし、それで食べることができない
とまではいきません。

 

ところが、アフリカの国の場合は
年間50万円の所得から100万円減ると、
マイナスになってしまいます。

 

もちろん、実際にはマイナスには
ならないでしょうが、食べることが
できないという状態にはなります。

 

アフリカ諸国にとって
蝗害がいかに大きな問題であるか、
よくわかりますね。

 

アフリカに限らず
アメリカでも蝗害による被害は拡大しています。

 

1870年代にネブラスカ州を襲った
ロッキートビバッタの群れの大きさは、
幅160キロメートル、
長さ500キロメートルとされています。

 

これらのバッタが、ある限りの
植物を食い荒らせば、
その被害は身の毛もよだつ程のものになるのも当然でしょう。

日本でイナゴの大量発生が起きる可能性は

日本でバッタ(イナゴ)の大量発生、
或いは蝗害という事態が起こる可能性は、
非常に少ないようですね。

 

その理由の一つは、日本は国土が狭いため
蝗害を引き起こすほどのバッタ類が
数世代に渡って大集団を作る環境がないためです。

 

但し、日本でもバッタの大群に
襲撃された所があるにはあるのです。

 

それが宮古島です。

 

1928年(昭和3年)5月、
フィリピンのルソン島でバッタが大量発生し、
台湾と石垣島、宮古島にも飛来して農作物に大きな被害が出ました。

 

このバッタはトノサマバッタですが、
台湾での観察記録では、
大きなグループでは、通り過ぎる迄に
2時間もかかるほどの大群もあったとのことです。

 

フィリピンで発生したバッタの大群は
ルソン島より270㎞北にある
バタン島まで、4つの島経由で渡ったそうです。

 

しかし、バタン島からは島伝いではなく
台湾、石垣島、宮古島へ海を越えて
直行したようなのです。

 

バタン島から台湾へは約300㎞、
石垣島までは499㎞、
宮古島までは591㎞もあるのです。

 

東京-大阪間に近いような遠距離を
しかも翅を休める所もない海上を
一体どうやってこのバッタは渡ってきたのでしょうか?

その謎は、今でも解明されていません・・・

ともあれ、日本においての蝗害は、
公害ほどには心配はいらないようですね。

 

 

結び

バッタ(イナゴ)類の
大量発生による被害(蝗害)は
我々日本人が想像する以上に恐るべきもののようですね。

 

西アフリカの蝗害では
経済的感覚で比較すると
東日本大震災に近い位の
大損害が発生しています。

 

その発生の原因も確たることはわかっていないのです。

 

とはいえ、相変異という
生態状の変化によるものらしいと
いう所まではわかってきています。

 

それに、日本では大規模な蝗害が
起こる可能性は非常に少ないようなのです。

 

まずは一安心というところですね。

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