夾竹桃は美しい花にもかかわらず、花や
枝、葉、実と全ての部分に毒があります。
しかも猛毒で、その毒性は青酸カリより
強く、毒性植物の王様トリカブトに匹敵
するという、怖い植物なのです。
1975年には、フランスで夾竹桃の枝を串
焼きの串に利用したところ、7名の死者
が発生したという例もあります。
しかも、経口の場合は摂取後1時間程で
症状が現れるなど、毒による影響が非常
に速いのも特徴の一つです。
また、枝の切り口からの汁が手などにつ
くと、皮膚炎となってしまいます。
桜の木には毛虫が多数つきますが、夾竹
桃は昆虫さえ毒に恐れをなして避けて通
ります。
それくらい恐ろしい夾竹桃なのですが、
その実を食べてしまったらどうなるの
でしょうか?
今回は、夾竹桃と近縁種のオキナワキョ
ウチクトウの毒と、その対応法などを見
ていきましょう。
夾竹桃の実は毒がある?
夾竹桃の実を食べたという例はほとんど
ありません。
夾竹桃は虫が寄りつかないため、大半が
挿し木などのクローンで増やしているの
で、受粉から果実が実ることは滅多にありません。
そのため
実を目にする機会は非常に少ないのです。
しかし、ごくまれに果実が実ることもあるようです。
その果実は細長い角状で、熟すると縦に
割れて、中には長い褐色の綿毛を持った
種子が入っています。
長さ10センチほどの線形の袋状で、種子
の両端に淡褐色の長毛が密生しています。
ところが、なんの実か知らずに夾竹桃の
実を3粒も食べてしまった人がいました。
すぐ胃腸薬と正露丸などを飲み、水分も
多量に飲んだところ、
特に症状も出なかったそうです。
これは非常に希な幸運な例だろうと思い
ます。
実3つともなると、致死量には至らないに
しても、何らかの症状が出てもおかしく
ない量でしょうね。
或いは夾竹桃の実に似た、別の植物の実
だったのかも知れません。
この例は、夾竹桃の実を食べたという、
非常に希な例で、これ以外の例はみつ
かりませんでした。
しかし、オキナワキョウチクトウという、
夾竹桃とは近縁の植物があります。
オキナワキョウチクトウとは?
オキナワキョウチクトウは、夾竹桃とは
近縁だけに、花などは実によく似ていますね。
オキナワキョウチクトウは、
リンドウ目キョウチクトウ科ミフクラギ属
と、夾竹桃とはかなり近い植物です。
こちらには、その実を食べて被害が出たと
いう例がかなりあります。
オキナワキョウチクトウは、
別名ミフクラギ、つまり目が膨らむという
ように、強烈な毒を持っています。
中毒症状としては、
皮膚炎や下痢、嘔吐、眩暈、不整脈、心臓麻痺
などがあります。
花は白や赤などで夾竹桃とよく似ています。
木の高さは、日本では10メートル程度で
すが、熱帯では20メートルに及ぶ巨木が
多いようです。
実は直径5-8cm程度の球形で、濃い赤い色をしています、
毒はケルベリンと言われるアルカロイドの配糖体です。
樹液などに触れて手で目を触れると腫れ
るので、「目脹ら木」(ミフクラギ)と
言われ、和名もミフクラギになっています。
同種のオオミフクラギは、その毒を毒殺
や自殺に用いたことから、
自殺の木(suicide tree)という英名があります。
オキナワキョウチクトウの実は、マンゴー
に似たな形状であり、リンゴのような色
合いをしていて、中々おいしそうです。
そのため、「毒リンゴ」という異称もあるようですね。
沖縄県内でも、
2013年に幼児がこれを誤食し、
緊急搬送される事故が起きています。
ところが、不思議なことに沖縄ではこの
猛毒のオキナワキョウチクトウを街路樹
にしています。
那覇市内だけでも170本ものオキナワキョ
ウチクトウの街路樹があり、沖縄全島で
は恐らく1000本単位で存在しているようですね。
なぜそんな物騒な木を街路樹にするのか、
誰でも不思議に思いますよね。
沖縄県の担当部署の話では、
「その危険性は十分認識しており、街路
樹については有毒で危険であることを訴
える注意看板を出している。
また、樹木には危険性を書いた注意ポス
ターを取りつけている。
しかし、県としては、現状ではオキナワ
キョウチクトウを直ちに伐採するといっ
た対策は考えていない。
注意を喚起をしつつ、台風などで倒れた
ものや枯れたものは、順次撤去していく
という対応をとっている。」
とのことなのです。
出典 Jタウンネット
もっとも、本土でも夾竹桃の街路樹は
広島市始め多数ありますが、これを
すぐ伐採という所はないようです。
夾竹桃の木は公害に強いので、その代役
は簡単には見つけられないのが理由らし
いですが、ちょっと不思議な気もしますね。
食べてしまった時の対処法は?
夾竹桃や類似のオキナワキョウチクトウ
は、強心配糖体を含む猛毒の植物です。
スリランカなどの国では、毎年数千人も
の自殺目的の服用者がいると報告されています。
そして、その死亡率は4~10%と言われているのです。
日本においても死亡例が複数報告されています。
それでは、もし誤って夾竹桃やオキナワ
キョウチクトウを摂取してしまったら、
どのように対処すればよいのでしょうか。
そのような場合、
自分でできる対処法はあまりありません。
前項で書いた例では、胃腸薬と正露丸を
服用、水分も多量に飲んだのです。
そして中毒の症状は出なかったのです。
しかし、胃腸薬と正露丸が夾竹桃のアコ
ニチンやオキナワキョウチクトウのケル
ベリンに効果があるとはとても考えられません。
恐らくは摂取したのは、よく似た植物の
果実ではなかったかと思われます。
もし夾竹桃やオキナワキョウチクトウを
摂取した場合は、まず一刻も早く病院へ
行くべきでしょう。
摂取直後なら、喉に指を入れて吐き出す
という対処もありますが、時間が経つと
効果はなさそうです。
病院では、
胃洗浄、アトロピンの静脈注射、活性炭の投与
などの治療をします。
しかしこれらは、いずれも素人にできる
ようなものではありません。
それに、ミフクラギ(オキナワキョウチ
クトウ)の毒性に関しては、致死量など
詳しいことはまだ判明していないことも多いのです。
したがって治療法も確立しているものは
少ないようですね。
有毒植物はこんなにある!
夾竹桃やオキナワキョウチクトウ以外に
も、強力な毒を持つ有毒植物は非常に多
いのです。
そして、その中には普通の人は有毒であ
ることを知らないと思われる植物も多数
あります。
- スズラン
- アジサイ
- スイートピー
- スイセン
- アセビ
- イチイ
- トリカブト
- クララ
- ゲルセミウム・エレガンス
- ベラドンナ
- ドクゼリ
- マンチニール
- マルバフジバカマ
- セルベラ・オドラム
- ジギタリス
こんなに有毒植物が多いとは、調べてみ
て自分でも驚きましたね。
トリカブトやベラドンナ、ジギタリス、
ドクゼリなどは納得できます。
しかし、スズランやアジサイ、スイート
ピー、スイセンまで有毒なのですね。
スズランは
すべての部分に毒があります。
胃痛、頭痛を引き起こしますが、毒は水
に溶けるので生けている花瓶の水も危険です。
アジサイは
毒がる部分は、花や葉、根です。
吐き気やめまいなどの症状を起こします。
スイートピーは
花や葉にも毒がありますが、特に種子に多いのです。
毒は麻痺を引き起こす神経毒です。
スイセンも有毒です。
葉がニラなどに似ているので、間違えて食べると危険です。
クララは、全ての部分が有毒です。
クララは和名では「眩草」と書き、根が
あまりに苦く、嘗めるとクラクラすると
言うところから来たそうですよ。
ゲルセミウム・エレガンスは
世界最強の毒を持つと言われています。
致死量は僅か0.05mg/kgです。
夾竹桃の致死量は0.3mg/kgなので、その
10倍近い毒性ということになります。
トウアズキは、
種子にアブリンという猛毒を持っています。
これはリシンの100倍近い毒性があり、
わずか3mgで人を死にいたらしめます。
マンチニールは、
世界で最も危険な木とされています。
軽く触れただけでも火傷のような症状が
起きたりします。
最も毒が多く含まれているのは果実で、
食べれば確実に死に至ります。
マンチールはスぺイン語で「死の小林檎」
というい意味だそうです。
マルバフジバカマ の毒は、
トレメトールです。
これを牛などが食べ、その牛を食用にすると、人間も中毒します。
アセビは
「馬酔木」と書きます。
アセビの毒にあたった馬が酔っ払ったよ
うに歩くことからの由来だそうです。
アセビは呼吸神経系に麻痺を起こします
ので、大変危険な植物です。
イチイは、
実には毒がなく、食べることができます。
しかし、実以外の部分は全て有毒で、
特に種子は数回噛むだけで致死量に達します。
尚、トリカブトやベラドンナ、ジギタリ
ス、ドクゼリなどは、周知であるため省
略します。
こうしてみますと、植物には随分と恐ろ
しいものが多いのですね。
スズランやアジサイ、スイートピー、ス
イセンのように、可憐で美しい花が有毒
とは世の無常を感じたりしますね。
結び
夾竹桃やオキナワキョウチクトウは、そ
の美しい花に似合わず、花や枝、葉、実
と全ての部分に毒があります。
しかもその毒は、青酸カリより強く、
毒性植物の王様トリカブトに匹敵
するという、怖い植物です。
夾竹桃の実を食べたという例はほとんど
ありませんが、近縁種のオキナワキョウ
チクトウには幾つか存在します。
幼児が誤って口に入れ、病院に搬送され
たり、女性が乾燥粉末を摂取したりで、
いずれも命はとりとめました。
誤って摂取した場合には、自分でできる
対処法は殆ど無く、できるだけ早く病院
に行くしかありません。
また、夾竹桃やオキナワキョウチクトウ
以外にも、有毒な植物は数多くあり、そ
の花も美しいものが多いのです。
花や実の美しさに気を取られて、触った
り食べたりしないよう、注意しましょう。