自然現象には、一見超自然的超現実的に
見えるものが、幾つもありますね。
蜃気楼もその一つで、同一の物体が上下
に、希に左右に2つ見えるのです。
昔の人たちには神がかりと見えたかもしれません。
似たような現象には、陽炎や逃げ水とい
うものがありますが、これまた不可思議
極まりない現象です。
神秘的現象という言葉は、これらのため
にある、といっても過言ではありません。
一体なぜこんなことが起きるのか、その
仕組みや原理を知りたくありませんか?
というわけで、今回は蜃気楼の仕組みや、
陽炎・逃げ水との違いなどを見ていきま
しょう!
Contents
蜃気楼の仕組みや原理は?
「海の向こうに、外つ国の風物が浮かび上がる」
「砂漠の果てのその先が、宙に浮かぶ」
このあたりが蜃気楼のイメージでしょうか。
完全に間違ったイメージとは言えません
が、といって正しい正確なイメージとも
言えませんね。
蜃気楼の定義としては、このようになっています。
蜃気楼(英:mirage)は、
密度の異なる大気の中で、
光が屈折するために起こる現象です。
地上や水上の物体が浮き上がって見えた
り、逆さまに見えたりすることもあります。
光は普通直進するのですが、密度の異な
る空気があると、より密度の高い冷たい
空気の方へ進む性質があります。
蜃気楼という言葉の由来は、古代中国で
は、大ハマグリ(蜃)が空中に吐いた息
によって描かれた楼閣と考えられていたことからです。
大気の密度は、大気の温度によって疎密
が生じます。
その粗密は、低空から上空へ温度が上が
る場合、下がる場合、そして水平方向で
温度が変わる場合の3パターンがあります。
この3パターンはそれぞれ蜃気楼の見え方
が異なります。
上位蜃気楼
上位蜃気楼は低空から上空へ温度が上がる
場合に起こります。
この場合は、
元となる物体の上に蜃気楼が出現するのです。
通常は、水平線や地平線の下に隠れて、
見えない筈の風景や船などが見える場
合があります。
もっともセンセーショナルな蜃気楼ですね。
北海道別海町の野付半島付近や紋別市な
どでは、この蜃気楼の一種として、
四角い太陽が見えることがあります。
この四角い太陽は、気温がマイナス20度
以下になった早朝、日の出直後の時間帯
に起こります。
ダイヤモンドダストと似たような条件ですね。
16世紀末のウィレム・バレンツらの北極
海探検時に、ノヴァヤゼムリャで発見さ
れたので、ノヴァヤゼムリャ現象という別名もあります。
下位蜃気楼
下位蜃気楼は
最も頻度の多い蜃気楼です。
アスファルトや砂地などの熱い地面や海
面に接した空気が熱せられ、下方の空気
の密度が低くなった場合に、物体の下に蜃気楼が出現します。
ビルや島などが浮いて見える浮島現象や、
逃げ水現象などが該当します。
鏡映(側方)蜃気楼
鏡映(側方)蜃気楼は、
元の物体の横方向に蜃気楼が出現する
タイプです。
この現象は非常に希で、滅多に見ることはできません。
日本で不知火と言われる現象も、この
鏡映(側方)蜃気楼であると言われています。
不知火とは、夜の海に多くの光がゆらめ
いて見える現象で、九州の八代海、有明
海などで希に見られるようです。
蜃気楼と思われる現象が、歴史に初めて
登場したのは、紀元前100年頃のインドの
「大智度論」と言われています。
この書物の中に蜃気楼と思われる「乾闥婆
城」という記述があるそうです。
中国では『史記』天官書の、蜃気楼につ
いての記述が有名です。
その中に「蜃(大はまぐり)の気(吐き
出す息)によって楼(高い建物)が形づ
くられる」という記述があります。
これが蜃気楼の語源については、最もよ
く引用される記述でしょう。
日本では上杉謙信について書かれた、
「北越軍談」に上杉謙信が蜃気楼を見
たいうエピソードがあります。
陽炎・逃げ水との違いは?
蜃気楼に似た現象には、
逃げ水、陽炎、不知火、浮島、ブロッケン、だるま朝日
など、多数あります。
この中には光の屈折によるものではない
ものや、蜃気楼のタイプの一つであるも
のなども含まれています。
要するに、原理別の呼称ではなく、目に
見えた現象をそのまま表現したというこ
とでしょうね。
そこで、これらの現象と蜃気楼との違い
を見てみましょう。
蜃気楼と逃げ水の違いとは?
逃げ水とは、長い一直線の道路の遠くの
方が、水をまいたように濡れて見える
現象のことを言います。
ところが、その濡れている地点迄行くと、
そこには水など全く無く、乾いた道路が
続いているだけなのです。
まるで、水が逃げているように感じられ
ることで、「逃げ水」と言われるように
なったわけです。
1128年頃の散木奇歌集には、「東路に
有といふなる 逃げ水の 逃げのがれ
ても 世を過ぐすかな」とあります。
1000年近い昔から逃げ水は観測されて
いたのですね。
大都市では、長い直線道路が続く所はほ
とんどないため、逃げ水はまず見られません。
しかし郊外に出ると、真夏の暑い盛りな
どでは時々見ることができます。
この逃げ水が起こるには、2つの条件が必要です。
- 真夏の晴れた暑い日であること
- 一直線で長い道路であること
この二つの条件がみたされると、逃げ水
を見ることができます。
逃げ水の仕組みと原理は、
暑い陽ざしで熱された道路と、空気中の
冷たい空気の層との間で、光の部分的な
屈折が起こるための現象です。
その光の屈折が体積を膨張させ、その空
気の上に勾配ができることで水があるよ
うに見えるようになります。
部分的に屈折率が変わることで、一種の
プリズムとなり、上方の景色が道路の表
面に映ったように見えるわけです。
これは前項で書いた下位蜃気楼の一種でもあります。
しかし下位蜃気楼と完全に同じというわ
けではなく、若干の違いがあります。
逃げ水は、日射などで大気の地表に近い
部分が暖められ、密度が低く屈折率が小
さくなります。
そして、下方向に屈折することで蜃気楼
が出現し、道路の表面に映ったように見
えるというものです。
逃げ水についてはこちらに詳しく書いています!
蜃気楼は、下方の空気が熱せられ、密度
が低くなった場合に、物体の下に蜃気楼
が出現します。
蜃気楼と陽炎の違いとは?
陽炎は、読みは通常は「かげろう」です
が、古語では「かぎろい」とも発音します。
陽炎とは、空気の温度の違いで発生する、
空気がゆらゆらと揺れて見える現象
のことを言います。
その仕組みは、局所的に密度の異なる大
気が混在することで光が屈折して起こります。
よく晴れていて陽ざしが強く、風もあま
り強くない日に、道路上や自動車の屋根
の上などに立ち昇るゆらめきが陽炎です。
蜃気楼も陽炎も、空気の屈折率が部分的
に異なる場合に起こる現象で、
基本的には同じものです。
ただ、陽炎は道路などの部分的現象で小
規模、蜃気楼大規模という点が違います。
この陽炎も、古来知られていて、
万葉集にも陽炎を詠ったものがあります。
「今さらに 雪降らめやも かぎろひの
燃ゆる春へ となりにしものを」 作者不詳
「東の野に かぎろひの立つ見えて
かへり見すれば 月かたぶきぬ」 柿本人麻呂
蜃気楼の名所は?
蜃気楼の名所としては、富山県の魚津市
と北海道の小樽市が有名です。
特に富山県の魚津市は、
日本一の蜃気楼の名所として、
全市を上げて蜃気楼をウリだしています。
まず、魚津漁港周辺を「蜃気楼展望地点」
として整備しています。
天気のいい日には、多数の人が蜃気楼を
見ようとやって来るのです。
蜃気楼ソフトというあやかりグッズも
あり、海の駅蜃気楼で販売されています。
この蜃気楼ソフトをなめながら、蜃気楼
を見てね、ということなのでしょうか。
近くには埋没林博物館もありますが、
ここは蜃気楼の博物館でもあるのです。
入り口には常にライブ映像が流れていま
すし、学芸員も蜃気楼に詳しい専門の方
が常駐しています。
蜃気楼を見た人には証明書が発行されま
すし、見られなくても、「残念だちゃ証」
がもらえるという徹底ぶり。
蜃気楼の見える時期と条件は、このようになっています。
春型
4月~5月
気温18℃~25℃
北寄りの弱い風
晴れた日の午後
4月から5月の間で10回程度出現
冬型
11月~3月
気温10℃以下
晴れた日
蜃気楼は英語でミラージュですが、
魚津市にはミラージュランド、
ミラージュプールもあります。
しかも、ゆるキャラもミラたん
とキマってますね。
結び
「海の向こうに、外つ国の風物が浮かび上がる」
「砂漠の果てのその先が、宙に浮かぶ」
というところがが蜃気楼のイメージでしょう。
蜃気楼(英:mirage)の発生する原因は、
密度の異なる大気の中で、
光が屈折するために起こる現象です。
蜃気楼には上位下位側方の3種があり、
それぞれ本来のものの上、下、横に
幻影が出現します。
蜃気楼と似た現象には、逃げ水、陽炎、
不知火、浮島、ブロッケン、だるま朝日
など多数あります。
これらは全て、大気の密度と温度が変化した
ための、屈折率の部分的変化が原因です。
要するに、逃げ水や陽炎は原理別の呼称
ではなく、目に見えた現象をそのまま表
現したということでしょうね。
日本での蜃気楼の名所は、やはり
富山県の魚津市がナンバーワンでしょう。
全市をあげての蜃気楼売り出しで、
ゆるキャラまでミラたんという
徹底ぶりなのです。