タヌキは日本では最もポピュラーな野生
動物の一つです。
タヌキを知らない日本人はいないでしょ
うし、動物園などで実物を見ている人も
多いかと思います。
しかし、海外、特に欧米では
タヌキを知らない人が大半なのです。
もちろん、写真すら見たことがなく、そ
んな動物が実在しているとは思ってもい
ない人が多いのです。
我々日本人からすると信じられない気が
しますが、それが実状なんですね。
ところが、その海外の人は一度タヌキの
写真や動画を見るとカワイイ!の連発で、
たちまちタヌキを人気アイドルにしてしまいます。
そこで今回は、タヌキは日本にしかいな
いのか、海外での扱いや一度タヌキを
知った時のアイドルぶりを、見ていきましょう。
タヌキは日本にしかいない?
タヌキは日本にしかいないのでしょうか?
この答はイエスでもあり、ノーでもあります。
タヌキの生息域は、日本の他に、朝鮮半島、
中国、ロシア、フランス、オーストリア、
オランダ、カザフスタン、スイス、スウェーデンその他です。
なんだ、日本だけじゃないじゃないか、
とおっしゃるかも知れません。
しかし、これらの国のタヌキは、大半は
日本から毛皮取りなどの目的で近年導入
されたもので、古来から住んでいたわけではありません。
タヌキの原産地は、日本、朝鮮半島、
中国やロシア東部などです。
ですが、一般的に知られるイメージの
タヌキは、まさに日本のタヌキそのものです。
その意味では、答は『イエス』と言って
よいでしょう。
タヌキは元々極東にのみ生息する、世界
的には珍しいイヌ科の動物なのです。
その体長は50 – 80センチ、体重は2 – 8
キロで、比較的小柄です。
「狸の●玉八畳敷き」などと言われます
が、実際には風呂敷よりハンカチより小
さく、せいぜい大きめのあめ玉位でしょう。
タヌキには色々とエピソードが多いですね。
それだけ日本人に親しまれている証拠でしょう。
タヌキ寝入り、死んだふり、腹鼓、かちかち山
など枚挙にいとまがありません。
死んだふりは『擬死』と言い、猟師が猟
銃を撃つとその銃声に驚いて、弾はかすっ
てもいないのに気絶してしまいます。
そして、猟師は仕留めたと思い油断して
いると、タヌ公は
息を吹き返して逃げ出すそうですよ。
もっともこの話はかなり眉唾もので、
真偽は不明です。
多分『偽』の方の比率が高いのでは?
それはともかく、タヌキは非常に臆病な
性格であるのは、確かなようですね。
又、『タヌキ』という名称は、この「た
ぬき寝入り」を「タマヌキ(魂の抜けた状態)」
と呼んだのが語源と言われています。
これまた、真偽は全く不明です。
タヌキの腹鼓は、江戸時代あたりから民
話で語られるようになりました。
腹が鼓のように膨らんで大きく、それを
叩いて拍子を取るというイメージです。
これは野口雨情作詞、中山晋平作曲の
証城寺の狸囃子
という歌による影響が大です。
証城寺の狸囃子は後にアメリカでも、アーサー・
キットという黒人女性歌手の歌で大ヒットしました。
しかし、アメリカ人ですので発音が、
「トゥントゥン トゥキヨダ メ~ンナデテ コエコエコエ」
となるのはやむをえないでしょうね。
しかも、その歌い方が非常に個性的で、
煽情的だと言われ、一時は発禁になった
りもしました。
タヌキにまつわる民話 分福茶釜
分福茶釜は、群馬県館林市の茂林寺にあるのですが、
ここにはタヌキの剥製?もあります。
分福茶釜は、1394年から1428年の間に住
職であった守鶴が愛用した茶釜です。
その茶釜は一度水を入れておくと、
一昼夜汲み続けても水がなくならない
という伝説がありました。
これは松浦静山による『甲子夜話』での
お話です。
実はこのお話には前説があります。
ある和尚さんが茶釜を買って寺に持ち帰
ります。
ところが、茶釜が熱さに耐え切れず動き
出したので、気味が悪くなった和尚さん
は近くを通りかかった貧しい古道具屋に茶釜を売ってしまうのです。
その夜古道具屋は鯛を買って食べようと
するのですが、
いつの間にか鯛がなくなっていました。
はて?と首を捻る古道具屋。
すると、茶釜を背負ったタヌキが出て来
て、「鯛を食べたのは自分です」と白状
したのです。
この茶釜は仲間との化け比べをしたら、
元に戻れなくなったタヌキだったのですね。
同情した古道具屋はしばらくの間家に
泊めてやることにしました。
タヌキはそのお礼に、見世物小屋で綱渡
りをする茶釜の芸をみせることにしました。
これが当たって古道具屋は豊かになりました。
その後タヌキは病に倒れ死んでしまいますが、
寺の和尚さんに供養され、茶釜は寺の宝となります。
茂林寺の伝説では、タヌキが僧に化けて
寺を守り、汲んでも尽きない茶を沸かし
たとされています。
その僧が守鶴なのです。
タヌキにまつわる民話 かちかち山
かちかち山は前項の分福茶釜とは逆に、
悪タヌキのお話です。
悪さをしておじいさんに捕らえられた
タヌ公は、悪知恵を働かせておばあさん
を殺してしまいます。
それだけではなく、おばあさんを
ババ汁にしておじいさんに食べさせるのです。
おじいさんはおばあさんの仇を討とうと
しますが、タヌキにはかないません。
そこでおじいさんは仲良しの兎に相談し
て、かわりに仇を討ってもらうことにしました。
しかし、このウサギのやることがエグイのです。
タヌキを柴刈りに誘いだし、タヌキの背
負った柴に火打ち石で火を付けるのです。
その時の火打ち石の音が『かちかち』で、
これがタイトルになったわけですね。
しかも、やけどをしたタヌキに、「これ
はやけどの妙薬だよ」と言って、
トウガラシ入りの味噌を塗ります。
やけどにトウガラシ入りの味噌を塗られ
てはたまりませんよね。
揚げ句の果て、ウサギはタヌキを漁に誘
い出し、泥舟に乗せます。
ぶくぶくと沈んでいくタヌキ。
こうしてウサギはおばあさんの仇を討ち
ましたとさ。
こうして見ると、タヌキよりウサギの方
があくどいんじゃないかと、タヌ公に同
情してしまいますね。
タヌ公の化ける能力は、一般的にはキツ
ネには劣ると言われています。
しかし、一説には「狐の七化け狸の八化け」
といって化ける能力はキツネよりも上とい
う説もあるのです。
タヌキは海外ではどんな扱い?
上の画像は、かちかち山のお話のイメー
ジ画ですが、日本のイメージとはまるで違いますね。
これが海外のタヌキのイメージなのです。
タヌキは海外ではどんな扱いかと言いま
すと、扱い以前に東アジア以外の海外で
は、
そもそもタヌキというものの存在すら知りません!
「タヌキ? なにそれ、うまいの?」
というところですね。
うまいの?と聞かれますと、これはあま
りうまいとは言えません。
大分前のことですが、丹沢の山小屋で
タヌキ汁を振る舞われました。
「あぶらが多すぎて決してうまいもの
じゃないけど、話の種に食べていきな」
というわけです。
このタヌキは近所の猟師が取ってきた
ものだそうです。
早速食べてみましたが、そのとおり油っ
ぽくて、とてもうまいとは言えませんでしたね。
そのため、味噌などの濃い味でカバーし
ているわけです。
話が少しそれましたので、海外でのタヌ
キについてに戻ります。
海外でのタヌキの一般的イメージは、
こんなものです。
日本とのギャップに驚かれることと思
いますよ。
「何なんだこの奇妙な生き物は!」
「日本版アライグマのタヌキという
動物が凄くかわいいぞ!」
「日本の民間伝承に伝わるだけの動
物だと思ってが、実在してるだ!」
「えっ!タヌキって実在したのか?!?!」
このあたりはまだまだ序の口です。
前に書いたように、東アジア以外では狸
を見たことのある人はほとんどいないのです。
イギリス 「一体何なんだこの生き物は!
今まで生きてきて今日初めてタヌキの存在を知ったよ。」
カナダ 「おまいら、タヌキって実在する動物だったらしいぞ!」
カナダ 「尋常じゃないくらいとても可愛いよ!
でもペット向けじゃなくて野生動物なのがおしい所だな。」
イスラエル 「未知の動物だけど可愛過
ぎて頭が混乱してるよ。」
オーストラリア 「見た感じかなり賢そう
だね。俺のそばにもいて欲しい。」
アメリカ 「私は日本で暮らしてた頃が
一番ハッピーな人生だったと思う。 だ
からこういう日本関連の投稿を見ると
ものすごくノルタルジックな気持ちになってしまう。」
イギリス 「自然を扱ったドキュメンタリー
が大好きでこれまで40年間も観続けてきたの
に、この魅力的な動物のことはまるで知らなかった。」
イギリス 「人類が月に行ったのが嘘で
あるように、この動物の存在もフェイク
なんじゃないだろうね?」
イギリス 「おお! 本物のタヌキを初
めて見たぞ!!!このエキセントリック
生物を我が家に迎えたいもんだ。」
アメリカ 「俺の人生に必要なのは、
タヌキ、お前なんだ。 今すぐ来てくれ!」
アメリカ 「タヌキ欲しいよ、タヌキ!
アライグマと犬が合体したみたいだね。」
国籍不明 「私、陶器で出来たタヌキの
徳利持ってますよ。かぶってる帽子がお
猪口の代わりになるのよ。」
ジャマイカ 「これ本当に野生の動物なの?
何かと何かを交配させた動物じゃなくて?」
アメリカ 「相変わらず日本は驚異が一杯
に詰まってる国だな。」
カナダ 「日本の野生動物には神秘的な
何かがあるね。」
国籍不明 「タヌキが実在してたことに
驚いてるwそんなものが実在するなんて全
然知らなかったからね。」
日本在住 「タヌキって変わった動物だ
よね。なぜか知らないけど常にお腹を空
かせてるらしいのw」
(注 これは証城寺の狸囃子英語版の影響でしょうか)
アメリカ 「我が家には陶器で出来たタ
ヌキの置物があるんだ。日本にいる時も
飾ってたんだけど、テネシーに戻ってきてからも飾ってるよ。」
プエルトリコ 「こっちにはあんなクー
ルな生き物いないよ。お願いだからこっ
ちにも輸出してくれよ!」
イギリス 「私こんなにキュートな動物
初めて見た。飼えるものなら絶対に自分
で飼いたい。」
アメリカ 「タヌキを飼うために俺は
生まれてきたのかもしれないと、今
思った。」
皆異口同音に狸を礼賛し、驚いている
様子が伝わって来ますね。
日本では狸はポピュラーな動物で、時に
は都会でも見かけるだけに、海外との
ギャップを感じてしまいます。
結び
タヌキは日本にしかいないわけではありません。
東アジアの国々にはタヌキが広く生息し
ていますし、ヨーロッパの幾つかの国に
もタヌキはいます。
しかし、
日本ほどタヌキが民衆に親しまれている国
は、まずないでしょうね。
日本には、カチカチ山や分福茶釜、タヌ
キ寝入り、死んだふりに腹鼓など、民間
伝承や民話が沢山あるのです。
海外ではそもそもタヌキという動物が実
在していることを知らない人が大半です
から、その違いは大きいですね。