トノサマバッタはバッタの中でも最大級
のバッタで、別名を『ダイミョウバッタ』
と言います。
殿様だの大名だのえらそうな名前が
ついていますが、そのせいか
仮面ライダーのモデルにもなったりもしています。
でかくてかっこいいということで、
子供達の飼育も盛んに行われていて、
飼育用ケースなども販売されています。
このトノサマバッタには色々と興味深い
所が多く、特に蝗害と呼ばれる大発生に
よる被害が大きな話題となっています。
蝗害はトノサマバッタやサバクトビバッタ
の大発生による被害で、見渡す限り一面に
あたりの全てが丸裸となってしまいます。
今回はそのトノサマバッタの幼虫は
どんなものか、餌や育て方、成長の過程
などを追ってみました!
Contents
トノサマバッタの幼虫はどんなの?
トノサマバッタの生態
トノサマバッタは、バッタ目バッタ科
トノサマバッタ属に分類されます。
トノサマバッタの大きさ5㎝前後で、
メスは1㎝程大きい場合が多いです。
顔つきも威厳があり、体格もがっちり
していて、殿様の名前に恥じません。
このトノサマバッタの生息域は日本全土
で北は北海道から南は沖縄まで
どこでも見ることができます。
外国でもユーラシア大陸からアフリカ
大陸、オーストラリア大陸まで広く
生息しています。
生息環境は田畑、草原、河川敷などが主
ですが、東京近辺では河川敷に多いようですね。
トノサマバッタの特徴としては飛翔力や
ジャンプ力が優れていることです。
自分の体長の数十倍以上もジャンプし、
その距離は50メートルに達する
場合もあるそうです。
5センチの虫が50メートル飛ぶという
ことは、人間で言えば
2000メートル飛ぶということになります。
単純すぎる比較なので、数値そのものは
ともかく、いかにトノサマバッタの
ジャンプ力が凄いかはわかりますね。
オスは繁殖期に入ると後脚と翅をすり
合わせて音を出し、メスに求愛します。
その後、土や砂の上で交尾し、交尾後
1週間程で産卵します。
繁殖期は夏と秋の2回あります。
夏に生まれた卵は1ヵ月程で孵化しま
すが、
秋の卵は卵のまま越冬して春に孵化します。
トノサマバッタはバッタ界の殿様では
ありますが、天敵も意外に多いのです。
- 大型肉食性昆虫 スズメバチやカマキリなど
- 肉食性節足動物 クモやムカデなど
- 両生類 ヒキガエルやトノサマガエルなど
- 爬虫類 ヘビやトカゲなど
- 鳥類 モズやチョウゲンボウなど
- 哺乳類 キツネやタヌキなど
トノサマバッタの
平均寿命は2ヵ月~3ヵ月程度
とされています。
尚、トノサマバッタには緑色と茶褐色の
個体がありますが、色の違いだけで
同じトノサマバッタです。
トノサマバッタの幼虫
トノサマバッタの幼虫は薄い膜のような
ものをつけて産まれてきます。
体長は8ミリ位の大きさで、成虫よりも
大分小さいですが、姿形は成虫とほぼ同じです。
幼虫の餌は、イネやススキなどを好んで食べます。
幼虫の特徴としては、
成虫よりも明るめの黄緑色をしています。
トノサマバッタの幼虫は、小さい頃から
成虫とよく似ていますので、一見して
トノサマバッタの幼虫だと直ぐにわかります。
こちらはトノサマバッタの幼虫の動画です。
群生相
トノサマバッタの生態で大きな特徴は、
群生相
と言われるものがあります。
それも場合によっては大変困る特徴なのです。
通常の場合トノサマバッタは
『単生相(孤独相)』で単独行動をしています。
しかし、時には群生相となり
数万匹から数千万匹
もの大集団となることがあります。
これが
蝗害と言われる現象です。
空が暗くなるほどの大集団が、あらゆる
ものを食い荒らし、通り過ぎた後には
一木一草も残っていません。
この群生相の時のトノサマバッタは、
かなり攻撃的な性格となり、
仲間同士で共食いもします。
この群生相はトノサマバッタに限らず
サバクトビバッタなどにもあります。
実際の蝗害は、日本では殆ど起こらず
海外の場合が大半です。
蝗害についてはこちらの記事にも書いています。
イナゴの大群(大量発生))の発生の理由や被害はどのくらい甚大になる?
トノサマバッタの幼虫の餌は何?
トノサマバッタの幼虫の餌としては、
イネ科やカヤツリグサ科の植物を好むようですね。
- 稲
- ススキ
- 笹
- スズメノカタビラ
- モロコシ
- エノコログサ(ねこじゃらし)
これらが入手困難な場合は、
- キャベツ
- キュウリ
- リンゴを切ったもの
も食べるようですね。
しかしできればやはりイネ科の植物を
与えたいものです。
トノサマバッタの幼虫の育て方の注意点は?
トノサマバッタの幼虫の育て方の注意点
としては、以下のようなものがあります。
餌に留意する
餌はやはり稲科の植物を中心にしたいものです。
そして、植物だけでなく、削り節や
コオロギ用の粒エサなどを混ぜて、
タンパク質を補給します。
これはトノサマバッタの食性は完全な
植物食ではなく、肉食に近い所もあり
植物ばかりでは満足しないからです。
この蛋白質補給は共食いの予防
にもなります。
飼育ケースにも注意
狭い飼育ケースで多数の幼虫を飼うのは
非常に危険です。
その理由は狭いケースに多数の幼虫が
いれておくと、
共食いをする場合が多くなるからです。
トノサマバッタの共食いを防止する
トノサマバッタには、脱皮中で動けない
個体や弱った個体を
共食いする習性があります。
共食いは特にメスがオスを襲うことが
多く、餌に蛋白質を多くしても完全に
予防することは困難です。
とはいえ、餌や飼育ケースに留意して
おけば、共食いの確率を減らすことはできます。
トノサマバッタに限らずバッタ類には
共食いの習性のようなものがあります。
前項で書いた『孤独相』のトノサマバッタ
は
色は緑色です。
そして単独で生活し、集団にはなりません。
しかし、『群生相』になると色も
茶褐色となり、大集団となって田畑を荒らします。
又、性質もかなり獰猛になり攻撃的になります。
この群生相には面白い説があります。
群生相の状態では、一見魚の群れの
ような『運命共同体』に見えます。
しかし、実はこの時、バッタ達は皆
『あいつを食いたい』という共通の意識で集まっているのです。
これがバッタが群生相の時に大集団をなす理由だというのです。
つまり、
前にいるバッタは「後の奴に喰われたくない!」
後のバッタは、「前の奴に追いついて喰いたい!」
というわけで大集団となり、文字通り
命がけで信じられないような距離を飛んでいくのです。
これが群生相のオモロ説なのですが、
これに対する反論もあります。
このようなものです。
この群生相と孤独相は生まれつきのもの
ですが、遺伝子の作用ではなく、
親が暮らした集団の密度によるものです。
しかも、親による相違も、単に他の個体との
接触の多寡によるという、非常に不思議な現象です。
集団生活をしている親からは、集団の
密度が高いほど、より群生相が強い子が産まれます。
そして、集団密度が低い程孤独相に
近い子が生まれ、
この特徴は世代を超えて累積的に遺伝していきます。
この相変異を引き起こす原因物質は、
ホルモンの一種とされています。
11種類のアミノ酸からなる[His7]コラゾニン
という
ポリペプチドです。
というわけで、群生相への相変異は、
『喰いたい喰われたくない説』とは
大分違いますね。
トノサマバッタの成長の過程を紹介
トノサマバッタは、一年に2度産卵します。
一度目の産卵は夏の初めで、二度目は秋となります。
メスは、腹部の先端を産卵床に突き刺して
産卵管を開いたり閉じたりしながら産卵していきます。
卵はスポンジ状の白い泡で包まれた状態で産まれてきます。
このスポンジ状の泡は『卵鞘』と呼ばれ
バナナのような形をしています。
一つの卵鞘の中には50個~100個程度の小さな卵が入っています。
夏に産んだ卵は1か月程で孵化しますが
秋に産んだ卵は孵化せずにそのまま越冬します。
昆虫には『変態』と呼ばれる、成長に
つれて形を変えていく生態があります。
変態には、
不変態(無変態)・不完全変態・完全変態
の3つがあります。
蝶などの完全変態は、成虫にある翅が
幼虫の時には外から見えず、蛹の時期を
経て成虫になるものです。
バッタ類は卵-幼虫-成虫という不完全変態に該当します。
卵から孵化した時の幼虫を1齢とし、
1回脱皮するごとに2齢・3例となっていきます。
トノサマバッタの場合は、通常は5齢で成虫となります。
結び
殿様だの大名だの
えらそうな名前のトノサマバッタ。
それだけにでかくてカッコいいと
子供達には大人気ですね。
今回はそのトノサマバッタの幼虫や、
餌や成長の過程を紹介してきました。
トノサマバッタやサバクトビバッタ
には
群生相という特異な生態の形式があります。
これが蝗害と言われる
バッタ類の大量発生の原因なのです。
又、この群生相はトノサマバッタの
共食いの原因ともなります。
しかし、なぜどのようにして群生相と
なるのは、現在の所真因はわかっておりません・・・