お盆過ぎの海水浴は危険だと、よく言われますよね。
その理由はどのようなことからなのでしょうか。
クラゲは確かにお盆の時期には
多くなるのですがその他にも色々と
理由があるのです。
帰省時に、
「お盆になったら海水浴へ行ってはいけないよ」
などと、老人達から言われた記憶の
ある人も多いことかと思います。
そこで今回は、そのお盆の海水浴は
なぜ危険なのか。
その理由と対策を探って見ました。
危険だという根拠の中にはかなり怪しげなものもありますが大半は事実に即しています。
年寄りの言うことだからと
馬鹿にしていると
痛い目に会うかも知れませんよ!
Contents
お盆の海水浴が危険な理由は?
クラゲ
お盆の海水浴が危険な理由の第一は
やはりクラゲが多いことでしょう。
クラゲには刺されても痛い程度ですむ
クラゲもいますが
カツオノエボシのように死に至るような
危険なクラゲもいます。
海水浴場によっては
クラゲよけのネットを備える所が
増えて来ていますが
全ての海水浴場にあるというわけではなく
また台風などの波の高い時には
そのネットを越えて
クラゲが侵入することもあります。
したがって、海水浴ではクラゲには
いくら注意しても
注意しすぎるということはありません。
ここでは、日本の海で遭遇する代表的なクラゲを紹介していきます。
カツオノエボシ
クラゲの中でもっとも危険なクラゲが
カツオノエボシなのです。
10センチほどの青い浮き袋或いは
ビニール袋のような外見で
見た目は中々きれいなのですが
これに刺された場合は、
刺された瞬間感電したときのようなショックを受け、その後次第に強い痛みと赤い腫れ
が発生します。
この痛みはかなり長く続き
時には数日間も続くことがあり
重度の場合は発熱などもあります。
この腫れは数日でなくなりますが
手当を間違えたりしなかったりすると
患部が壊死して長く消えない瘢痕になってしまいます。
もっとも怖いのは
一度カツオノエボシに刺されたことがある人が
二度目に刺されますと、
アナフィラキシーショックという、強いアレルギー性のショックが発生し、時には死に至ることもある
というのです。
この場合には、刺されてから暫くすると
息切れや呼吸困難、血圧低下といった重症となります。
このアナフィラキシーショックにより
死亡した例も相当数あるのです。
おまけにカツオノエボシの毒は
生きている間だけではなく
死骸にもありますので
死んでいるから大丈夫と油断しないでください。
砂浜に青いビニール袋状のものが
落ちていたら絶対に触らないことですね。
カツオノエボシはクラゲと言われていますが
実は単一の個体ではなく
多数のヒドロ虫が集合した群体なのです。
この青い浮き袋の中には
炭酸ガスや酸素などの気体が入っていて
その浮力でぷかぷかと海上に浮かんでいます。
この浮き袋はしぼめれば海中に潜ることもできます。
また、青い浮き袋には三角形の帆の
ようなものがついていて
これに風を受けて海上を
移動することができるのです。
単一の生物でなく集合体であること
海に潜ることもできること
風を受けて移動もできることなど
カツオノエボシの生態は神秘
としか言いようがありませんね。
カツオノエボシはほぼ日本全国で発生し
春は沖縄など夏になると
本州や東北にまで生息しています。
カツオノエボシに刺されないという
特別な対処法は、残念ながらありません。
ダイビング用のウェットスーツは
有効ですが夏の浜辺では暑くてたまりません。
青い袋状のものには
近寄らないことしか
対策はなさそうですね。
カツオノエボシに刺された時の応急手当ですが、
- まず最初に安全な場所に退避
- 次ぎに刺された場所をよく調べ
- 触手(刺胞)が確認できたら、それを取り去る
- 刺された部位を海水で十分洗い流す
- 患部を冷やしながら、できるだけ早く病院に行く
という順になります。
触手(刺胞)を取る時には素手ではなく
ピンセットなどを使わないと
被害がさらに大きくなってしまいます。
又、カツオノエボシの毒には
酢は厳禁
です。
もう一つ、洗い流すのは真水ではなく、海水を使います。
上の応急手当は刺されたのが
カツオノエボシであることが
確実な場合で
他のクラゲの可能性も考えられる時は
触手(刺胞)を取った後はそれ以上はなにもせず
できるだけ速く病院に行くようにします。
ハブクラゲ
ハブクラゲは、カツオノエボシについで
危険なクラゲです。
この『ハブ』は毒蛇のハブにちなんだもの
なのでしょうが沖縄や奄美に生息しています。
ハブクラゲは7月から9月にかけてが一番被害が多い時期です。
その触手には多数の刺胞があり
なにか(人間など!)に触れると
そこから毒針が飛び出して刺します。
刺された場合は
強い痛みやかゆみが生じ
最悪の場合は死に至ることもあります。
過去に3件の死亡例があるそうなので、ご注意を!
ハブクラゲに指された場合の応急処置
- 食酢を患部にかける
- 触手を取り除く
- 氷や冷水で冷やす
- できるだけ速く医師の診察を受ける
尚、酢をかけるのはハブクラゲの場合で
カツオノエボシには絶対禁物です。
酢には、ハブクラゲやアンドンクラゲの
刺胞の発射を抑制する働きがありますが
カツオノエボシには逆に促進する作用があります。
なので何に刺されたのかわからない場合は
酢は使わない方が無難です。
アンドンクラゲ
「海水浴場でクラゲに刺された!」
という場合、最も多いのが
このアンドンクラゲとミズクラゲです。
アンドンクラゲは
本州では『電気クラゲ』や『イラ』
と呼ばれていますが
北海道で『タコテレレン』という
愉快な名前がついています。
電気クラゲというのは
刺されるとビリッと電気に
感電したような痛みがあるからなのでしょうね。
アンドンクラゲは
直径が3センチから5センチ程度と小さく
その上透明なので見つけにくく
そのため余計刺される可能性が大きいのです。
但し、毒性はあまり強くなく
死に至るようなことはほとんどありません。
アンドンクラゲは強い陽ざしが嫌いなので
日中は海に深く潜っていて
曇り日や夕方から
朝方にかけて浅い海面を移動します。
このような条件の時は
余計発見しにくいので
要注意ですね。
ミズクラゲ
ミズクラゲはアンドンクラゲとならんで
日本では最も一般的なクラゲです。
その名の通り無色透明で
傘から透けて見える胃腔
生殖腺が4つあることから
ヨツメクラゲとも呼ばれます。
大きさは直径10センチから20センチ程度
ですが大きいものになると
直系が30センチ以上のものもあります。
その毒は弱く、刺されても
一瞬チクッとする程度で
大事に至ることはまずありません。
それに性質も攻撃的ではないようで
こちらがちょっかいを出さない限り
刺されることもない、などと言われています。
アカクラゲ
アカクラゲの毒性はかなり強いのですが
実際に刺された人は少ないようです。
その理由は、発生が春先で
海水浴のシーズンには
少なくなっているということらしいですね。
その傘は、赤い色をしていて
放射状に延びる16本の縞模様があります。
傘の大きさは
10センチから20センチ程度
ですが、触手は1メートルもあります。
アカクラゲは死んでからも
毒性が残っていますので、要注意です。
又、触手の色や形状が苔や
水草に似ているので
水草と間違えて触ったりすると危険です。
尚、このアカクラゲを
乾燥させて粉末にしたものを
吸い込むとくしゃみが止まらなります。
そのため『ハクションクラゲ』と言われることがあるそうですよ。
カギノテクラゲ
カギノテクラゲは傘は皿状あるいは
半球状で、直径1.5~2センチと小さいクラゲです。
傘の縁に数十本の触手があり
その先端近くで折れ曲がっているので
そのため『カギノテ』という名前がついています。
その毒性はかなり強いのですが、生息数が比較的少ないので、被害はあまり知られていません。
クラゲについてはこちらの記事もどうぞ!
土用波
お盆の海水浴が危険な理由は
クラゲだけではありません。
お盆の時期には、土用波という強く大きな波
が押し寄せることが多いのです。
土用とは、雑節の一つで
二十四節気の立春、立夏、立秋、立冬の前の
18日間を、土用と言います。
土用の丑の日にはウナギなどと言いますね。
晩夏のこの時期には、台風などの低気圧の影響で、
通常の2.3倍もある高波
が押し寄せることがあります。
それが『土用波』なのです。
土用波は、そのうねりが独特な上に
大潮の時期とも重なりやすいので
これに呑み込まれると
プロ級のサーファーでもやられてしまうことがあります。
クラゲに刺されても、死ぬことは
滅多にありませんが、土用波に呑み込まれれば
死の可能性は非常に高いです。
ある意味、クラゲの数倍、いや数十倍恐ろしい、晩夏の恐怖ですね。
離岸流
離岸流とは、字の通り岸から離れて行く流れです。
海から岸に向かって強い風が吹きくと
海水は波となり沖から海岸へと打ち寄せられます。
当然、海水は海岸に溜まってゆき
その溜まった海水は沖へ戻ろうとします。
その沖へ戻る道筋に当たるのが、離岸流なのです。
離岸流の幅は1
0メートルから30メートル位で
その速さは秒速2メートルにもなります。
水泳の100メートルの世界記録が、47.05秒です。
秒速に換算すると
約2.1メートル
になります。
つまり離岸流に巻き込まれると、水泳の100メートルの世界記録保持者でも、
1秒に10センチしか進めない
ということになります。
まして、水泳の選手でもない普通の人間は、あっという間に沖へ流されてしまいます。
それにこの離岸流は、土用波の時には発生しやすいと言われています。
荒天の際に海に入るのは自殺行為ですね。
水温低下
お盆の時期には、水温も下がり始めています。
水温が低くなると、心臓麻痺や筋肉の痙攣(いわゆる『つる』という状態)が起こりやすくなり、これが水難事故に直結します。
幽霊
最後になりましたが、これがもっとも
怖いという人も多いかも知れませんね。
「お盆に海へ行くと幽霊に足を引っ張られる」
という話を聞いたことのある人は、多いのではないでしょうか。
離岸流などは、その
「足を引っ張られる」状態なのかも知れませんよ!
もともとお盆とは、
死んだ祖先が岸の彼方(彼岸)から、こちらに帰って来る時期
なのです。
そして彼岸(あの世)に戻る時には、海を泳いで帰るという言い伝えもあります。
そして、誰からも供養されなかった霊も、
「この時期なら、誰かが供養してくれるかも・・・」
と思って、この世に戻ってくるというのです。
そのような寂しい霊は、寂しさに耐えかねて、海に人がいると一緒に連れて帰ろうとするのです。
それが、「お盆に海へ行くと幽霊に足を引っ張られる」ことなのですね。
結び
「お盆になったら海水浴へ行ってはいけないよ」
「お盆に海へ行くと幽霊に足を引っ張られるよ」
などなど、お盆に海水浴に行くのは危険だと、よく言われますね。
勿論、これらの言葉は単なる迷信ではありますが、迷信にも時には真実であることがあるのです。
お盆の海水浴は、クラゲや土用波、離岸流、水温の低下など、危険な要素が多数ありますので、年寄りの迷信だなどと、馬鹿にしない方がよいですよ。